
「無料サービス」「警備料金込み」でも行政書士法違反となるリスクがあります
道路工事、外壁工事、足場設置、資材搬入、クレーン作業、イベント警備など、警備会社が関わる現場では、道路使用許可申請や道路占用許可申請が必要となるケースが少なくありません。
そのため、これまでは現場の流れの中で、警備会社が「ついでに道路使用許可申請もやっておきます」「申請書もこちらで作っておきます」「警備費に含めて対応します」といった形や警備業務を受注するために対応してきたケースもあると思います。
しかし、令和8年1月1日施行の改正行政書士法により、このような運用はこれまで以上に慎重な確認が必要となりました。
特に今回の改正では、行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、官公署に提出する書類の作成等を業として行うことができないことが、より明確にされました。
つまり、単に「申請代行料」という名目で請求していないから大丈夫、という時代ではありません。
当事務所にも、最近この点についての問い合わせが増えています。
また、先日は別の業界団体において、道路使用許可申請・道路占用許可申請を含めた法令実務セミナーも開催しました。
本記事では、警備会社が特に注意すべきポイント、どのようなケースで問題が発覚しやすいのか、発注元にどのように説明すればよいのかを、実務目線で整理します。
1. 道路使用許可申請は「警備業務の延長」ではありません
警備会社にとって、道路使用許可は非常に身近な手続きです。
たとえば、次のような現場では道路使用許可が必要となることがあります。
・道路上で工事や作業を行う場合
・クレーン作業、資材搬入、コンクリート打設等を行う場合
・道路上又は道路上空に足場、看板、仮囲い等を設置する場合
・祭礼、イベント、ロケ、撮影等で道路を使用する場合
・交通誘導員の配置図や作業帯図を添付して申請する場合
警備会社は、交通誘導や現場の安全確保に関する専門的な知見を持っています。
そのため、現場図面、交通誘導員の配置、作業帯、保安資機材の配置などについて、実務上の資料を作成すること自体は自然な業務です。
しかし、その資料が道路使用許可申請書に添付され、警察署に提出するための書類として作成される場合には、単なる警備資料ではなく、官公署提出書類の一部として扱われる可能性があります。
ここが非常に重要です。
警備計画を作ることと、道路使用許可申請書類を作成することは、似ているようで法的には別の問題です。
2. 改正行政書士法で何が変わったのか
令和8年1月1日施行の改正行政書士法では、第19条の業務制限規定において、行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、行政書士法第1条の3に規定する業務を行うことができないことが明確化されました。
ここでいう第1条の3の業務には、官公署に提出する書類の作成が含まれます。
道路使用許可申請書は警察署に提出する書類です。
道路占用許可申請書は道路管理者に提出する書類です。
いずれも、行政書士法上の官公署提出書類に該当し得る手続きです。
そのため、警備会社が他人の依頼を受けて、報酬を得て、反復継続してこれらの申請書類を作成・代行している場合、行政書士法違反となるリスクがあります。
ここで注意すべきなのは、「名目を変えればよい」という話ではないことです。
たとえば、次のような名目でも問題となる可能性があります。
・申請代行料
・事務手数料
・申請サポート料
・現場管理費
・コンサルティング料
・書類作成費
・警備料金に含む
・無料サービス
・会費、紹介料、成功報酬
特に危険なのは、「申請代行は無料です」と説明しながら、実際には警備料金や現場管理費の中にその対価が含まれているケースです。
法律上問題となるのは、請求書にどのような名目で書いているかだけではありません。
実質的に、書類作成や申請代行の対価を受けていると評価されるかどうかです。
※参考例として、消火器を販売している会社が買ってもらうことを前提に消防計画も作成するというのは、結果として消火器を購入していもらっているという対価があると判断との話もあります。
3. 警備会社で特に問題になりやすいケース
警備会社の実務で特に注意すべきなのは、次のようなケースです。
ケース1 「道路使用許可込み」で警備を受注している
見積書や提案書に、
「道路使用許可申請込み」
「申請手続き一式込み」
「警察協議・道路使用許可対応含む」
などと記載している場合です。
この場合、発注元から見れば、警備会社が申請業務まで請け負っているように見えます。
警備費の中に申請書類作成の対価が含まれていると評価されると、行政書士法違反のリスクがあります。
ケース2 発注元名義で申請書を作成している
申請者は施工会社やイベント主催者になっているが、実際には警備会社が申請書の内容を作成し、発注元は押印や確認だけをしているケースです。
名義上は発注元が申請していても、実態として警備会社が他人の依頼を受けて申請書類を作成していれば、問題となる可能性があります。
「名義だけ本人」「中身は警備会社作成」という形は、非常に危険です。
ケース3 交通誘導図・作業帯図を申請用に作成している
交通誘導員配置図、作業帯図、保安資機材配置図などは、警備会社が作成することが多い資料です。
ただし、これらを単なる警備計画書として作成するのか、警察署に提出する道路使用許可申請の添付書類として作成するのかで、意味合いが変わります。
ここは、線引きをしっかりして違法とならない形態を取ることが重要です。
ケース4 オンライン申請を発注元のIDで代行している
最近はオンライン申請も増えています。
発注元のアカウントを使って、警備会社が申請内容を入力し、添付資料をアップロードするような運用は、特に注意が必要です。
「ログイン名義は発注元だから大丈夫」という話ではありません。
誰が実質的に申請書類を作成し、誰が申請内容を判断して入力したのかが問題になります。
ケース5 行政書士の名前だけ借りている
行政書士と提携しているように見えても、実際には警備会社がほとんどの書類を作成し、行政書士が形式的に確認しているだけ、という運用も危険です。
行政書士の名義貸しと評価されるリスクもあり、警備会社側だけでなく、行政書士側にも問題が及ぶ可能性があります。
適法に進めるためには、行政書士が依頼者から正式に依頼を受け、必要な確認を行い、行政書士としての責任で書類を作成・提出する体制が必要です。
4. 逆に、警備会社が対応してよい業務は何か
すべてが禁止されるわけではありません。
警備会社として当然に行うべき業務もあります。
たとえば、次のような業務です。
・警備計画の作成
・交通誘導員の配置計画の作成
・現場の危険箇所の確認
・保安資機材の配置案の作成
・警備業務に必要な現場情報の整理
・行政書士や発注元に対する事実情報の提供
・現場で必要な警備員数、配置時間、誘導方法の提案
これらは警備会社の専門業務ですが、道路使用許可申請書を作成するには必要な項目も多いです。
問題は、それを超えて、発注元に代わって道路使用許可申請書や道路占用許可申請書を完成させたり、警察署・道路管理者への提出手続きを代行したりすることです。
したがって、実務上は次のように切り分けることが重要です。
警備会社は、警備業務に必要な資料や現場情報を作成・提供する。
申請書類の作成、申請内容の整理、官公署への提出代理は、申請者本人又は行政書士が行う。
この線引きを社内ルールとして明確にしておくことが、警備会社を守ることにつながります。
5. どのようなケースで発覚するのか
「これまで問題になっていないから大丈夫」と考えるのは危険です。
発覚するきっかけは、意外と身近なところにあります。
1. 警察署窓口での確認
同じ警備会社の担当者が、複数の会社の道路使用許可申請を継続的に持ち込んでいる場合、窓口で不自然に見られる可能性があります。
申請者は施工会社なのに、いつも警備会社が書類を作成し、窓口対応をしている場合には、実態を確認されることがあります。
2. 発注元のコンプライアンス確認
近年、建設会社、設備会社、イベント会社などの発注元側でも、コンプライアンス意識が高まっています。
「この申請代行は行政書士法上問題ないのか」
「警備会社が道路使用許可申請を代行してよいのか」
「行政書士の登録番号はあるのか」
このような確認が入るケースが増えています。
特に大手企業、上場企業、公共工事関連、元請の内部監査がある現場では、今後さらに確認が厳しくなると考えられます。
3. 見積書・請求書・契約書から発覚する
見積書に「道路使用許可申請代行費」「申請手数料」「申請サポート費」などの記載がある場合、書面上そのまま証拠になります。
また、「申請代行無料」と記載していても、警備料金が通常より高く設定されている場合や、申請対応を売りにして受注している場合には、実質的な対価があると見られる可能性があります。
4. 競合他社・元従業員・取引先からの指摘
行政書士法違反の疑いは、行政書士会、警察、自治体、発注元などに情報提供されることがあります。
特に、業界内で「どこまでやってよいのか」が注目されている分野では、競合他社や元従業員、取引先から問題が表面化することもあります。
5. 申請内容の不備や事故発生時
申請内容に不備があった場合、現場で許可条件と異なる作業をしていた場合、又は事故・苦情が発生した場合には、申請書類の作成経緯まで確認される可能性があります。
その際、「誰が申請書を作成したのか」「誰が発注元に代わって手続きしたのか」が問題になることがあります。
6. 違反した場合のリスク
行政書士法違反は、単なるマナー違反ではありません。
改正後は、無資格者による業務制限違反について、行為者本人が刑事罰の対象となるだけでなく、法人にも罰金刑が科される可能性があります。
警備会社にとって特に大きいのは、罰金額そのものよりも、次のような二次的リスクです。
・発注元からの取引停止
・契約解除
・元請のコンプライアンス監査での指摘
・公共工事や大手企業案件からの排除
・警察署や行政機関からの信用低下
・社内管理体制への疑義
・ホームページや提案書の修正対応
・代表者、役員、営業担当者への責任追及
・行政書士法違反企業としての評判リスク
なお、行政書士法違反が直ちに道路使用許可そのものの無効や警備業認定の処分に直結するとは限りません。
しかし、申請内容に虚偽や重大な不備があった場合、許可条件に反する作業をしていた場合、又は発注元との契約上問題がある場合には、工事中断、再申請、現場停止、損害賠償、取引停止といった実務上の重大な影響が生じる可能性があります。
「刑事罰になるか」だけでなく、「発注元から信頼を失うか」という視点で考える必要があります。
7. 発注元にはどのように説明すべきか
発注元から、
「いつも警備会社さんが道路使用許可までやってくれていた」
「他社は申請をやってくれる」
「申請だけ別に頼むのは面倒」
と言われることもあると思います。
その場合は、感情的に断るのではなく、次のように説明するのが有効です。
説明例
令和8年1月1日施行の行政書士法改正により、道路使用許可申請など官公署に提出する書類の作成・提出代行については、行政書士法上の確認が非常に重要になっています。
弊社は警備会社として、交通誘導計画、警備員配置、保安資機材の配置案など、警備業務に関する資料作成とご提案は責任を持って対応いたします。
一方で、道路使用許可申請書の作成や警察署への申請代行については、行政書士法に抵触する可能性があるため、申請者である御社又は行政書士にて対応いただく形をお願いしております。
必要であれば、ご負担を過度に増やさない形で道路使用許可申請に詳しい行政書士をご紹介することも可能です。
このように説明すれば、単に「できません」と断るよりも、コンプライアンス上の正しい対応として伝わりやすくなります。
発注元のコンプライアンス意識が高まっている現在では、むしろこの説明ができる警備会社の方が信頼されます。
8. 適法な運用にするための実務対応
警備会社としては、次の対応をおすすめします。
1. 見積書から「申請代行込み」の表現を外す
見積書や提案書に、
「道路使用許可申請込み」
「申請代行無料」
「警察申請対応一式」
などの記載がある場合は、見直しが必要です。
代わりに、次のような表現にするのが安全です。
「道路使用許可申請に必要となる警備資料の作成協力」
「交通誘導員配置案の作成」
「保安資機材配置案の作成」
「申請者又は行政書士への現場情報提供」
警備会社が行う業務を、警備業務の範囲に限定して明確にすることが重要です。
2. 申請書の作成者を明確にする
道路使用許可申請書を誰が作成するのか。
誰が申請者となるのか。
行政書士に依頼する場合、誰と行政書士が契約するのか。
行政書士報酬は誰が支払うのか。
これらをあいまいにしないことが重要です。
原則として、実際に道路を使用して工事・作業を行う施工業者、イベント主催者、占用者等が申請主体となり、必要に応じて行政書士へ正式に依頼する流れが望ましいです。
3. 行政書士との連携体制を整える
警備会社が行政書士を紹介すること自体が直ちに問題となるわけではありません。
ただし、警備会社が行政書士報酬に不透明な上乗せをしたり、行政書士の名義だけを借りたり、実際の書類作成を警備会社が行ったりする運用は避けるべきです。
行政書士が正式に依頼を受け、行政書士としての責任で確認・作成・提出する体制を整えることが必要です。
4. 社内マニュアルを作成する
営業担当者や管制担当者が、現場判断で申請書を作ってしまうケースは少なくありません。
そのため、社内で次のようなルールを定めることが有効です。
・道路使用許可申請書は作成しない
・発注元名義でオンライン申請を代行しない
・申請代行込みの見積りを出さない
・申請に必要な警備資料の提供に留める
・発注元から依頼があった場合は行政書士へつなぐ
・警察署窓口への対応範囲を明確にする
現場担当者を守るためにも、会社として統一した運用が必要です。
9. 当事務所で対応できること
当事務所では、道路使用許可申請・道路占用許可申請に関するご相談を受けています。
また、警備業界・建設業界の実務を踏まえ、単に申請書を作成するだけでなく、警備会社・施工会社・発注元の役割分担を整理したうえで、法令に沿った運用体制をご提案しています。
特に、次のようなご相談に対応しています。
・警備会社が現在行っている申請代行業務の適法性確認
・見積書、契約書、提案書の文言チェック
・道路使用許可申請、道路占用許可申請の代行
・発注元への説明文の作成
・行政書士法改正に対応した社内ルール作成
・警備会社向けのコンプライアンス研修
・建設会社、設備会社、イベント会社向けの許可申請体制の整備
先日も、別の業界団体において、道路使用許可申請・道路占用許可申請を含めたセミナーを実施しました。
実務でよくあるグレーな運用、警備会社がどこまで対応できるのか、行政書士に依頼すべき部分はどこか、といった点を、現場目線で分かりやすく解説しています。
10. まとめ
道路使用許可申請や道路占用許可申請は、警備会社にとって非常に身近な手続きです。
しかし、身近であることと、警備会社が代行してよいことは別問題です。
令和8年1月1日施行の改正行政書士法により、「申請代行料を取っていない」「無料サービスである」「警備料金に含めている」「コンサル料として受け取っている」といった説明では、行政書士法上のリスクを回避できない可能性があります。
警備会社としては、次の線引きが重要です。
警備計画、交通誘導員配置、保安資機材配置など、警備業務に関する資料作成は行う。
一方で、道路使用許可申請書・道路占用許可申請書の作成や提出代行は、申請者本人又は行政書士が行う。
発注元のコンプライアンス意識が高まっている今、法令を正しく説明できる警備会社は、むしろ信頼されます。
「今までやっていたから大丈夫」ではなく、今のうちに契約書、見積書、社内運用を見直すことをおすすめします。
道路使用許可申請・道路占用許可申請の運用に不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。
当事務所では、警備会社・建設会社・イベント会社の実務に合わせて、法令に沿った安全な運用体制の整備をサポートしています。
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